『とらいあんぐるレボリューション!!』




〜音夢の一目惚れ〜














――――桜の舞う季節はいつも出会いと別れの季節だった。

――――俺は、美しく舞い散る桜の中で、また新しい出会いを体験する。















視点:KYOYA





「ふう……この言う風に、一人で旅をするのも久しぶりだな……」



大学一年の春――――つまり、あの事件があってから早一年――――

俺は、ただ一人でのんびりと桜が咲くのを見ながら苦笑した。

今回、ふと旅に出てみようと思い、俺は春休み(春季休校とも言う)だということも手伝って即座に行動を開始した。



そして、最初に着いたのは初音島と呼ばれる桜舞う場所だった。

皆には、多少なりとも反対されるという事が分かったので、今回は誰にも言っていない。



そして、今回の初音島行きを決定した最大の理由は美由希にあった。

美由希は、ついに美紗斗さんから龍鱗を受け継ぎ御神の正当な後継者になったのだ。

俺は、自分の弟子の成長に大きな満足感と――――本当に少しの、喪失感を味わっていた。

それ故に、息抜きの意味を込めて誰もここにくることは話さずに来たのだ。



「――――ふむ、見事なものだな。これが、この島自慢の桜公園、か……」



俺は、着いて直ぐに近場で予約していたホテルにチェックインしこの桜公園に来た。

ここは、この初音島にくる前から真っ先に来ようと思っていた場所のひとつだった。



そして、ふと足をとめたのは桜公園の手前だった。

そこには、桜公園という名を冠するに相応しいだけの見事としか言えない桜が美しくも儚く、

また可憐にも力強く咲き誇っていた。

風が吹き、桜が美しく舞い上がる。



「ほぅ……!」



俺は、その見事な桜に思わず感嘆の声を上げる。

ここにある桜は、海鳴でも最も美しく咲き誇る場所にすら劣らなかった。

いや、美しさというだけでならここの桜の方が上かもしれない。

思わずそう思えるほど、そこの桜は美しかった。



「――――中に入ってみるか」



俺は、静かに囁くとゆったりとした歩調で歩き始めた。

あたり一面に咲く桜の花が舞う中、俺はゆっくりと周りを見回しながら歩いていく。



(ふむ――――外側から見える桜も、十分に綺麗だが、中の桜はそれに輪をかけて綺麗だな……)



来たことを上機嫌に思いながら、俺は桜を見る。

ふと、俺の感覚に何かが引っかかった。

それは、複数の人の気配だった。



(何だ――――?)



俺は、普段なら気にかからないことなのになぜか気になってしまった。

そちらのほうに歩いていくと、肩ほどまでの髪の毛を後ろ髪に茶色いリボンを結い、

首元に鈴をしている少女が二人の男性に囲まれているのを発見した。

様子から見て、どう見ても男達と少女は知り合いには見えない。

なぜなら、少女は木の傍に追い詰められて、二人の男は生理的に拒否するような顔で少女を見ているからだ。



(――――全く……春先にはこういう輩が多くて困る)



俺は、溜息を吐きながらその少女達の元へと向かう。

見たところ、二人の男のうち一人は素人で、もう一人はそれなりに格闘術を習っているようだが――――

あの腕では、晶の相手にすらならないというのは簡単に見て取れた。

その、男の方が何事かを言って少女の胸元のリボンに手を伸ばすのが分かった。

俺は、グッとその腕を横からつかむ。



「てめぇ!何しやがる」

「――――この少女は、嫌がっている。直ぐに立ち去るんだな」



にべもなくそう言い切って、俺は男を見た。

男は、俺を睨みつけて蹴りを入れようとするが、俺は、その動作を予測し即座に体を入れ替えて男をひっくり返した。



ドスンッ!!!



かなり大きな音がして、その男は背中からしたたかに叩き付けられる。

今の衝撃で、男は息が完全に詰まってしまったようだ。

もう一人の男は、俺とその男を見て一瞬唖然とするが、右ポケットからナイフを直ぐに取り出して、ニヤニヤと俺を見る。



「へへへっ……兄ちゃんよぉ?こいつが見えんだろ?とっとと帰っておねんねしな!」

「……はぁ」



この手の輩は、こういうものを見せたら直ぐに逃げるとても思っているのか?

――――この作者と同名の主人公が見たら、思わず鼻で笑ってしまうぞ?



俺は、呆れた溜息を吐いてその男を見た。



「て、てめぇ!この手のものが見えてねぇのか!?分かったらとっとと消えろ!!」

「――――分かっているのだろうな?」



俺は、静かに殺気を解き放つ。

今までは、完全に抑えていたのだが、刃物が出てくれば話は別だった。

男は、その殺気に飲まれて声も出なくなってしまったようだ。



「刃物を出したということは、生き死にの覚悟があるということだ……貴様に、それだけの覚悟があるんだな?」



静かに言葉を紡いだ俺に、男は恐怖の為かナイフを持つ手が振るえ、足もがたがたと震えている。

よく見えれば、足元に転がっている男も同様だ。

その男達に、俺は容赦も情けもなく静かに語りかける。



「――――1度だけ、チャンスをやる。失せろ、そして二度とこのようなことをしてみろ――――」



俺は静かに、ただ静かに言葉を紡いでゆく。



「次は――――殺す」



静かに、脅しの意味を込めてそういう。

男達は、コクコクとただ人形のように頭を振り大急ぎで俺の前から去った。

後に残ったのは、俺と襲われていた少女だった。



「――――大丈夫ですか?」



俺は、未だに唖然としている少女の顔を除き見た。

少女は、呆然としていたが俺の言葉にはっと気づいた。



「あ、はい。危ないところをお助け頂いてありがとうございます」



少女は、丁寧に頭を下げる。

俺は、少しだけ照れながらも少女に言葉を返す。



「いえ、ご無事で何よりです。――――それよりも、よければ人目のあるところまでお送りしましょうか?」



先程の光景を思い出しながら、俺は少女にそういう。

まずは、人目のあるところに行ってこの少女を安心させるのが先だろう。



「あ、はい。すいません……」



気が動転しているのか、少女は俺の言葉に頷く。

俺は、先程来た道をなぞるように、歩き始めた。

少女もそれに続く。



(まだ少し、脅えているようだな)



無理もないと思う、あんな目にあったのだ、それも仕方がない。

とりあえず、この公園を抜けて人目があるところに行こう……

俺は、そう思うと、少女を連れ添って桜公園を出た。















とりあえず、少女を連れ添って外に出る。

桜公園を出て、大通りに出るころには少女も大分落ち着いたようだ。

俺は、近くにあるベンチに少女を座らせると、自動販売機でジュース(紅茶を二本)を買って少女に渡す。



「――――すいません」

「いえ、困った時にはお互い様、ですから」



そう言って、少女を安心させるように、微笑む。

少女は、少しだけ顔を赤くして俯きながら紅茶を開けて飲み始めた。

ふと、まだ自己紹介をしていないことに気が付いた。



「そう言えば、名乗っていませんでしたね。俺は、高町恭也といいます」

「あ……私は、朝倉音夢と申します。先程は、本当にありがとうございま――――」



俺は、朝倉さんの言葉を聞き、人差し指を彼女の顔の前に立てた。



「先程の事は、早く忘れましょう。それと、昼とはいえ女性の一人歩きは危ないですから注意してください」

「――――はい、すいませんでした。それと、ありがとうございます」



そう言って、ぺこりと頭を下げる。

俺は、その様子に少しだけ苦笑すると、手元にある缶ジュースの紅茶を少し飲む。

朝倉さんもそれに習って、少しだけ缶ジュースを飲んだ。

そのまま、少しの間だけ沈黙が落ちる。

先程の場所とは違って、人通りの為に少しだけ煩いが、それでも静かだった。



「それでは、失礼」



そう言って、俺は朝倉さんに少しだけ会釈すると去ろうとする。

その時、朝倉さんは「あっ……」と声を上げる。

その声に、思わず反応し後ろを見て朝倉さんを見返してしまう。

朝倉さんは、少しだけ寂しそうな表情をしていた。



「――――どうかされましたか?」



その表情は、俺の中ではどんな人間でもされると嫌になってしまう表情の一つだった。

それ故に、俺は思わず声をかけなおしてしまった。



「あ、いえ、その……あの、もう少しだけ、お話をしませんか?」



しどろもどろになって、朝倉さんはそう言う。

俺は、その様子に少々驚きながら、ベンチに座りなおした。

朝倉さんは、その様子に安堵の吐息を吐く。



「こんな、朴訥な男と話しても面白くもありませんよ?」

「――――いえ、そんなことはないです。私は楽しいですよ」



朝倉さんは、笑顔でそう言う。

――――ふむ、やはり人間はどんな時でも笑顔が一番見てて気持ちがいいな。

俺は、初めて見た笑みに少しだけ嬉しく思いながら、特に目的の無い旅だし、こんな事が会っても良いかとも思う。














俺は、朝倉さんと色々な話をした。

趣味の事(盆栽のことを話したときには流石に驚いていた)や、好きな歌の事等……etc…etc…

正直に言えば、有意義な時間だったと思う。

俺は、ふと、空が黒くなりだしているのを見て時計を確認する。



「そろそろいい時間ですね」

「あ、本当です……」



朝倉さんも時計を確認する。

その表情は残念そうだった。

俺は、先程の事をふと思い出して――――



「よければ自宅まで送りましょうか?」



そう言う、先程あんなことが合ったのだ、これ位はしておいたほうがいい。

俺は、そう判断した。



「――――お願い、できますか」



(高町さんと……もっと居たい)



俺は、朝倉さんの考えを知らずに(朴念仁め……by:作者)その言葉に頷いた。

――――やはり、先程の今でまだ払拭しきれていないらしい。(朴念仁……by:作者)



「分かりました」



特にといった言葉は無かったが、俺は美由希やなのはと一緒に帰る時はこんな感じだったな……と、

思いながら、彼女の家に向かった。















視点:NEMU





私は、今日会ったあの人の事を頭の中に反芻させる。

鋭い瞳を持つ、あの人を……

最初は怖い人――――と、思ったけど私の方を振り向いた時のあの人――――高町さんはとても優しげな表情をしていた。

あの表情を見た時に、私は本気で心臓が打ち抜かれたかと思うくらいの衝撃を受けた。

元々整っている顔立ちだけれども、あの表情ははっきり言って反則だった。



――――さくらと兄さんが付き合い始めてから、一年……辛い事が多くって、今までは世界がモノクロだったけど……

私は、初めてその視界中で色づく人を見つけた。



「明日も、会いたいな……」



そう囁くと、私は瞳を閉じて静かに寝始めた。

明日に思いを馳せて――――















翌朝、私はいつもよりも少しだけ遅い朝を迎えた。

兄さんは、確か朝早くからさくらと一緒にデートに出掛けると言っていた為、もう家には居ないだろう。

私は、手早く朝食を摂ると自室に戻り服を着替える。

――――この服をきるのも本当に久しぶり。

私の持っている服の中でも一番お気に入りの服で、滅多には着ないものだ。

その服を着て、ボーと鏡を見る。

鏡に映る自分は、何かを期待するような瞳をしていた。



(会いたい――――!)



ただ、その一身で私は家を飛び出すように出た。

これは、一目惚れと言うものだろうか――――そんなこと――――



(どうでも良い……)



そう、私の中ではそんなことはどうでもよかった。

ただ、自分の気持ちが大きくなっていくのが理解できていたから――――

これは、間違えなく二度目の恋だった。














視点:KYOYA




さて、と――――昼食はどうするか……

辺り一帯を見て静かに黙考する。

ここは商店街――――まぁ、簡単に言えば、昨日朝倉さんと話していた場所だ。

参ったな……どこが美味しい店なんだろうか。

やはり、旅先でもできるだけ美味い物が食べたい為に俺は少しの間黙考することになった。

とはいえ出る答えなぞ無く――――



(――――考えていても、仕方が無い、か)



と、言う考えに行き当たってしまう。

俺は、僅かに溜息を吐き、一つの店の中に入ろうとすると――――



「高町さん!!」



よく響く声で、俺の事を呼ぶ少女がいた。

あまり大きく無い声だがはっきりと聞こえた。



「――――朝倉さん?」



俺の言葉に、朝倉さんは嬉しそうに微笑みながら傍によってきた―――――















視点:NEMU




会えた……!!

私の心の中に占めていた言葉はこの一言だった。

嬉しかった、本当に――――

だから、私は無意識に、本当に無意識にその人の名前を呼んでいた。

ただし、少しの理性も働きあまり大声ではなかったけど……



「高町さん!!」



高町さんが、驚いたような表情で私のことを見る。

そして、その静かな声が私のことを呼ぶ。



「――――朝倉さん?」



少しの驚きと共に、私の声に答える。

高町さんは、昨日話していたときのような表情になりながらも言葉を紡ぐ。



「どうされたんですか?」



私は、一瞬言葉に舅する。

考えてみれば、彼と私の接点は昨日の事だけ――――

あまり、なれなれしくするのは失礼なんじゃないか、と、私は一瞬考えてしまい、表情を強張らせる。

そんな私を見てか、高町さんは――――



「――――そういえば、朝倉さんは昼食は摂られましたか?」



話をいきなり、変えた。

私は、少しそのことに感謝をしながらも頭を振る。



「いえ、まだですけど……?」

「では、よかったらご一緒しませんか?美味しい店を探しているのですが――――いまいち勝手が分からずに困っていたんですよ」



天の救いだ、と思った。

偶然とは言え、高町さんと昼食を取れるなんて――――!



「はい、是非!」



私は、思わぬことに本心から嬉しく思いながら高町さんを私が一番美味しいと思う店に連れて行った。














そして、店の帰り――――

私は、高町さんを少しだけ強引に観光案内をさせてもらうように頼んだ。

彼と居るだけで、楽しい。

彼と居るだけで、嬉しい。

彼のそばに居るだけで――――どんどん引き込まれていくのが分かった。

凄い魅力を持つ人だと思った。

そして、それと同時に、私は彼を本気で好きになっていた。














そして、それから一週間の時が経った――――





あれから私は、高町さん――――恭也さんと一緒にこの初音島を見て回った。

私にとっては凄く有意義で楽しい時間だった。

恭也さんにとってはどうだったか分からないけど――――多分、私と一緒に居て楽しかったのだと思う。

ただ――――彼は、明日帰ってしまうといっていた。

色々な話を聞いた。

古流の剣術をしていると聞いたときには驚いたけど、私には、関係なかった。

彼が優しい人だと分かっていたから――――何の為にその力を行使するのかを理解できたから。



だから、決めた、私は彼にこの自分の気持ちを明かすことを――――














港に見えるのは彼の後姿――――

私は彼に向かって走っていく。



「音夢?」



彼は、荷物を抱えた状態で私を見る。

私は、彼のもとに近寄り――――



「恭也さん――――あなた事が、好きです――――」




























サクラ サク ミライ コイ ユメ



魔龍 銀さん、投稿投稿ありがとうございます。
美姫 「ありがとうございます〜」
恭也と音夢、それぞれの視点から進むお話。
美姫 「音夢の方が積極的だったわね」
うんうん。そして、別れの日。果たして、音夢の言葉に恭也は何て言って答えたのか。
美姫 「色んな事を想像してしまうわね」
ああかな、こうかな?
美姫 「楽しい作品をありがとございます」
それでは〜。



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