気がついたら、階段の下にいた・・・・・・

 

確かに俺は、乃梨子を抱えて階段下へ行くはずだった。

 

着地の際、おそらく多大なる負担が膝に懸かるであったはずだ。

 

 

普通に着地したのならば・・・・・・

 

 

恭也は、乃梨子が階段から落ちる瞬間、神速を使った。

 

宙に浮いている乃梨子に、全力で階段を駆け下りる。

 

乃梨子の身体が階段に落ちる前に、何とか身体を受け止める。

 

そこから恭也は神速のまま下まで一気に駆け下りようとしたところ・・・・・・

 

突然視界が切り替わって、恭也と乃梨子は階段の下にいた。

 

そして、神速が解けた・・・・・・

 

 

乃梨子の無事を確認すると、恭也はまず上を見上げた。

 

志摩子が乃梨子を心配して、階段を駆け下りてきていた。

 

その景色の中で、恭也は少し違和感を覚えた。

 

些細なことだ。あのことが無ければ、きっと見過ごしていた。

 

むしろ、あのことがあったからこそ、それを違和感として感じたのかもしれない。

 

 

月咲さんは、由乃さんの後ろを歩いてはいなかったか・・・・・・?

 

となれば、階段の下から見上げた場合、月咲さんは由乃さんの前にいるはずだ。

 

ならば彼女は何故、由乃さんの後ろにいるのだろうか・・・・・・。

 

俺の中で、ひとつの答えが導き出される。

 

 

彼女は、まさか・・・・・・能力者なのか・・・・・・?

 

 

 

 

乃梨子さんが階段から落ちそうになったとき、私は思わず力を使った。

 

幸い誰も見ていなかったし、羽を展開せずとも移動は可能だ。

 

私は・・・・・・そういう風に作られた。

 

乃梨子さんのところへテレポートし、乃梨子さんに触れて下まで移動した。

 

それから、元の場所へもう一度移動した。

 

お姉さまの後ろへ戻ってしまったが、誰も気がつかないだろう。

 

私は、テレポートが得意ではない。

 

ほぼ、思ったとおりのところへ飛べるのだが、対象の前後左右にずれてしまう。

 

だが飛ぶ瞬間に、自分の移動した位置は把握できるから支障は無い。

 

そうして、誰にも気がつかれずに乃梨子さんを助けた・・・・・・そのはずだった。

 

恭也さまは私を見ている。

 

彼は乃梨子さんを抱え、階段下にいる。

 

恭也さまが乃梨子さんを助けようと動いたのは分かった。

 

でも、乃梨子さんを助けたとき、恭也さまの姿は見えなかったのに・・・・・・

 

 

まさか・・・・・・彼も能力者・・・・・・?

 

 

 

恭也は、月咲から視線を戻して乃梨子を見た。

 

「乃梨子・・・・・・立てるか?」

 

「あ、はい」

 

乃梨子は少し名残惜しそうな顔をしながらも、恭也が降ろすと自分の足で立った。

 

すると、階段を駆け下りてきた志摩子は、息を切らせながら乃梨子の前に来た。

 

「良かった・・・・・・どこも怪我は無い?」

 

「うん・・・・・・。ごめんね志摩子さん、心配かけて」

 

「いいのよ乃梨子。恭也さん、ありがとうございました」

 

志摩子は恭也に、深々と頭を下げた。

 

 

 

恭也は、選択を迫られていた。

 

月咲について、本人に何者かを問うか否か・・・・・・。

 

問うべき理由はある。

 

まず、彼女が何者かに狙われている件だ。

 

最初、彼女が狙われたときは疑問だった。

 

自分に対する陽動作戦なのか、と思いもした。

 

だが、それならばあの時、恭也自身にまったく意識が向けられないということが腑に落ちない。

 

ならば、彼女自身を狙ったものと見るのが正しい判断だろう。

 

しかし、同時に彼女にそれを聞いてはいけない気がする。

 

仮に彼女がHGSで、何者かに狙われているのだとした場合。

 

それを知られたら、おそらく学園を去ってしまうだろう。

 

そう思ったのは、たった今の出来事が証明している。

 

月咲は、自分の正体がばれるかも知れないことを承知で、乃梨子のために

おそらく・・・・・・力を使った。

 

それが、彼女の性格を表している。

 

きっと彼女自身、何か人に言えない秘密があるのだろう。

 

恭也自身にもそれがあるので、月咲の気持ちが痛いほど分かる。

 

ならば、自分の選択は・・・・・・

 

 

 

月咲は、自分の部屋で今日のことを考えていた。

 

彼は何者なのだろうか・・・・・・。

 

月咲としては、乃梨子だけを自分と一緒にテレポートさせたはずだ。

 

それなのに、彼も一緒に階段下にいたということは・・・・・・

 

いや、力の消耗具合から言うと、テレポートしたときには彼も既にいたのか。

 

だが、自分の目では確認できなかった。

 

彼は瞬間移動、もしくは高速移動が出来るのだろうか。

 

どうする・・・・・・?

 

自分のことを知られてしまったのか・・・・・・?

 

力のことを知られたとしても、それは別に問題は無い。

 

問題は、彼が私の身に起こっていることを知った場合だ。

 

今、乃梨子さんを助けようと身を挺したことから考えて、彼は首を突っ込むだろう。

 

彼を・・・・・・みんなを巻き込みたくは無い・・・・・・。

 

もうこれ以上・・・・・・自分の大事な人を失いたくない・・・・・・。

 

学園祭が終わったら、ここを離れよう。

 

そして・・・・・・あいつらを消したら次は・・・・・・

 

 

 

遠い記憶・・・・・・幸せだったころの思い出・・・・・・

 

その幸せは、ある日突然終わりを告げて・・・・・・

 

私は、復讐の刃を手にした・・・・・・

 




お互いに何やら気付いた二人…。
美姫 「その件に関し、それぞれの今後の行動を決める」
果たして、その決断は何をもたらすのか。
美姫 「また、何を捨てる事になるのか」
と、少しシリアス風味な予告風〜。
美姫 「……せ、折角のシリアスが、アンタの所為で!」
ご、ごめん。で、でも、仕方がないんだ。
美姫 「何がよ!」
シリアスは3秒が限界なんだ!
美姫 「威張るな! この馬鹿!」
ぐげっ。……う、うぅぅ、じ、次回も楽しみに待ってます。
美姫 「待ってますね〜」



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