『あなたの顔が好き』

 

 

 

孤独で・・・・・・寂しそうな目をした少女

 

少女は私のお気に入りの場所によく来た

 

銀杏並木の中にぽつんと立っている、一本の桜の木の下

 

私はその子を知っていた

 

佐藤聖・・・・・・二年生の間では有名な生徒

 

一年藤組に咲く、美しい華

 

そして、その華は鋭いトゲで覆われている・・・・・・と

 

今までにも何人もの人間が、少女を妹にしようとして断られてきた

 

私と少女は、特に何も話さず木の下に座っている

 

私はその少女の顔を見るのが好きだった

 

美しく、彫りの深い顔立ち

 

時折浮かぶ、とても冷めたような表情

 

二つが相まって、一つの芸術のようにも思えた

 

ある日、私は提案した

 

『あなたの顔が好き。だから私の妹になりなさい』

 

そうすれば、しつこく妹になって、と言われることも無いから、と付け加えた

 

少女は、初めて気の抜けたような表情を見せた。

 

そして

 

『こんな顔で満足されるのでしたら』

 

と、私の手を取った

 

 

 

ある日、少女は私に訊いた

 

『お姉さまは、私の扱い方が上手いですね』

 

そんなあなたの顔は、必ず少し拗ねたよう顔をしていたけど

 

私は扱いが上手だっただけ

 

お姉さまとしては失格なのよ

 

私は、あなたを傷つけないだけで・・・・・・

 

決して導くことは出来ないのだから・・・・・・

 

 

 

卒業した私は、あなたのことばかり考えていた

 

一人で泣いていないだろうか

 

妹は出来ただろうか

 

心配で仕方が無かった

 

でも、あなたの周りにはあなたを支えてくれる人がいる

 

きっと大丈夫

 

だから私も・・・・・・私も・・・・・・

 

歩き出さないといけない

 

 

 

あなたにとって私が必要だったように

 

私にとってもあなたは必要だったのよ

 

私のことを、必要としてくれるあなたが・・・・・・

 

 

 

私は必要ですか?

 

この世の中に必要な人間ですか?

 

私のことを、必要としてくれる人はいますか?

 

 

 

『私は・・・・・・必要ですか?』

 

 

 

 

 

 

黒き花びら〜Another story〜

 

 

 

 

 

 

これは一つの未来

 

かつて『白薔薇さま』と、リリアンで呼ばれていた一人の女性の物語

 

通い慣れたリリアンを離れ、海鳴大学へ進学した涼森樹(すずもり いつき)

 

二年生になった彼女は、新入生の青年と出会う

 

青年と女性の、一つの未来での物語・・・・・・




Anotherストーリー。
美姫 「一体、どんなお話になるのかしらね」
次回以降も楽しみに待ってます。
美姫 「待ってますね〜」



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