恭也は、1時間かけてたっぷりと整体をされた。

 

「とりあえず、学校へ行くのは許可をしますが、武器類はすべて預からせていただきます」

 

鍛錬することを禁じられた恭也は、武器を取り上げられてしまった。

 

恭也は、手元に無いと落ち着かないといいたかったが、そう言うと再びあの地獄の整体が来ると思うととても口を開けなかった。

 

毎日、病院に寄ること。決して鍛錬はしないことを条件に、恭也はその日で退院した。

 

膝は、歩くことに支障は無かったが、走ることはさすがに出来そうも無かった。

 

 

 

だが、依頼を終えたことでひとつ思い当たることがあった。

 

依頼を終えたということは、自分がここにいる理由がなくなってしまう。

 

元々赤星達と違って、別の名目でもぐりこんだ言わば契約社員に近い状態である。

 

そのままお別れになるかも知れない、と思うと恭也も悲しくなった。

 

今日は、ろくに眠れそうもなかった・・・・・・。

 

 

 

 

 

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放課後、放送で呼び出しがあった。

 

来るときが着たか・・・・・・恭也はそう思って教室にいる聖に別れを告げておこうと思った。

 

あいにく、聖は既に薔薇の館に向かったらしく教室にはいなかった。

 

恭也はため息をすると、学園長室へ向かっていった。

 

 

 

「失礼します、高町恭也、入ります」

 

ノックをしてドアを開けると、学園長が笑顔で出迎えた。

 

「恭也さん・・・・・・本当にありがとうございました」

 

学園長は、恭也の手を取ってお礼を言う。

 

「それで、一応あなたへの仕事の依頼は完了したのだけれど・・・・・・」

 

そう言って、恭也の目を見る。

 

恭也は、昨日からずっと考えていたことを、言うことに決めた。

 

「申し訳ございません・・・・・・依頼は終わったのですが・・・・・・俺を留学期間が終わるまで置いていただけませんか?」

 

その言葉に、学園長は驚きの表情を浮かべるが、すぐに優しい顔になって

 

「恭也さん、なぜそう思われるのですか?」

 

と、シスターのように恭也に問い掛けた。

 

「俺は・・・・・・仕事でこの学園に着ましたが・・・・・・1週間でしたけど、みんなと仲良くすることが出来ました・・・・・・。でも、もっとみんなと一緒にいたいんです・・・・・・。お願いします。・・・・・・決して、手を出したりはしませんから・・・・・・」

 

その言葉に、学園長は恭也の肩に手を置くと

 

「だそうです。皆さん、こちらにいらっしゃい」

 

応接室のドアが開き、そこから山百合会のメンバーが理事長室に入ってきた。

 

「実はね、放課後に皆さんが私のところへきて、恭也さんを帰さないで!ってお願いに来たのですよ」

 

それに驚いて、恭也はみんなを見ると、微笑んでいるもの、目をそらすものとさまざまだ。

 

「お前だけ先に帰ろうったってそうは行かないぞ」

 

赤星・・・・・・

 

「私達、一緒に帰るんだからね」

 

藤代・・・・・・

 

「まだまだここに居てもらうわよ。令ちゃんのためにも」

 

由乃さん・・・・・・

 

「恭也さんにも剣の稽古をつけてもらいたいです」

 

令さん・・・・・・

 

「こんな面白い人を帰すはずないじゃない」

 

江利子さん・・・・・・

 

「今度は私も一緒にどこか連れてってもらおうかしら?」

 

蓉子さん・・・・・・

 

「恭也さんがいなくなったら祐巳が余計に不抜けてしまいますわ」

 

祥子さん・・・・・・

 

「私は・・・・・・恭也さんともっといたいです」

 

祐巳・・・・・・

 

「私の心を奪っておいてさようならなんてさせないわよ?」

 

聖・・・・・・

 

「私の最高の歌を恭也さんに聞いてもらわないと、イギリスへ飛べませんわ」

 

静さん・・・・・・

 

「私を護ってくれたお礼をしたいです・・・・・・」

 

志摩子・・・・・・

 

 

 

「でもね・・・・・・恭也さん。残念だけどあなたのお願いは受け入れられないわ」

 

学園長が目を閉じてそう言った。

 

その言葉に全員が学園長を見て、驚いた表情と泣きそうな顔を浮かべるが・・・・・・

 

「手を出さない、なんて今更酷いんじゃないですか?男だったらしっかり責任は取らないとね」

 

そう、恭也を見て・・・・・・みんなを見て微笑んだ。

 

「な・・・・・・いや、それはリリアンの学園長として・・・・・・まずいんじゃないですか」

 

恭也はしどろもどろにそう言うが

 

「私は、学園長である前に、ティオレの親友よ?」

 

いたずらが成功した顔をみて、恭也は理不尽だが説得力のある言葉に頭を抱えた。

 

 

 

「と、言うわけで・・・・・・これからもよろしくね!」

 

聖が恭也に抱きつくと、

 

「お姉さま・・・・・・?」

 

志摩子の一言に、聖は「あー」と気が付くと

 

「そっかそっか、わかったよ志摩子。はい、どうぞ」

 

と、恭也の後ろに回って恭也を志摩子の方向に突き飛ばす。

 

恭也は、志摩子にぶつかりそうになるが、志摩子は恭也をしっかりと抱きとめると顔をうずめた。

 

「あー、志摩子さんずるいー!」

 

祐巳はそう言うと、自分も恭也の元へ走って背中から抱きついた。

 

「静は・・・・・・いいの?」

 

聖が、それを傍観している静に言うと

 

「ええ・・・・・・。私は最終的に恭也さんが私を選んでいただくように動きますから」

 

くすりと笑ってそういう静の顔に、そっか、と聖は納得した。

 

 

 

しかしこの光景を、ティオレが学園長にお願いして仕掛けたカメラによって、高町家にライブ放映されていたことを知るものはいなかった。

 

「あう・・・・・・恭ちゃんが・・・・・・恭ちゃんが・・・・・・」

 

「お師匠・・・・・・」

 

「勇兄・・・・・・そ、そんな・・・・・・」

 

「恭也ー、私達のこと忘れないでよー」

 

「内縁の妻である忍ちゃんを差し置いて・・・・・・」

 

「恭也さん・・・・・・早く帰ってきてください・・・・・・」

 

「や〜ん、恭也モテモテじゃない〜。はー、私ももうすぐおばあちゃんか・・・・・・」

 

「おにーちゃん・・・・・・行く先々でこんな感じなのですね・・・・・・」

 

 

 

高町家では、その日恭也の預かり知らぬところで宴会が開かれた。

 

那美は、寮に帰ると真雪からお酒をふんだくって飲みつぶれていたそうだった・・・・・・。

 

後に、美沙斗は語る。

 

「今日の美由希の殺気は・・・・・・この私が立ってられないなんてな」

 

事情を知らない美沙斗は、美由希の成長を誇らしく思っていたとか。




あははは〜。
今回は、ほのぼのとした感じだったね。
美姫 「うんうん。良きかな、良きかな」
にしても、祐巳が意外と大胆な行動をしたのはびっくり。
美姫 「確かにね。でも、祐巳も成長しているのよ」
なるほど。さて、次回はどうなるのか!?
美姫 「まだまだ楽しみは続く〜」



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