『永久の眠り』




第二話

「こっちですよ、恭也さん」

「やけに嬉しそうだな…エルルゥ」

「ふふっ、そうですか?」

恭也のどこか疲れたような台詞に満面の笑みでエルルゥは答え、更に村を案内してゆく。
そして畑の付近に近寄ったところで声をかけられる。

「エルルゥじゃねーか。お?…こっちの色男は嬢ちゃんと一緒に運ばれてきたやつか、なんだ、怪我もしてねーみたいだしよかったじゃねぇか」

はっはっはと豪快に笑いながら、肩を叩いてくる。

「ありがとうございます」

「で、そこまで嬉しそうな顔してるってことは…行くとこまでっ……」

恭也が礼を言い、豪快な親父がセクハラな台詞をはこうとした瞬間、鈍い音と共に倒れ付す。

「ったく…この馬鹿はせっかく良いところを邪魔すんじゃないっての」

金髪の女性がなにやら怒りながら、倒れている男を睨んでいる。

(…睨んでいるのはいいのですがその手に持った、鍬は何だろうか?しかもなにやら血がついてるように見えるのだが…。あれで強打されたら死ぬ気がするのだがいいのか?)

声には出さないが、危険なのではと恭也が考えていると先ほどの女性に話しかけられる。

「ふ〜ん、なかなかいい男じゃないか。エルルゥも奥手だと思ってたんだけど…この様子じゃ問題ないね」

ニヤニヤと意地の悪そうな笑みをエルルゥに向ける。

「ソポク姉さんっ!!」

エルルゥが顔を真っ赤にして、ソポクに抗議するが、恭也はどうしたのだ?と顔を傾げる

「…あ〜あれは大変だよ…うちのいい勝負だよこりゃ」

「…何のことでしょうか?」

心底分からないというように、疑問を投げかける。

「駄目だこりゃ…」

「あはは…」

エルルゥは空笑いをし、ソポクと呼ばれた女性はこめかみを押さえている。

「さて、そろそろ仕事に戻るかね。ほらあんた行くよ」

「あ〜…もうちょっと手加減してくれよ」

頭を押さえながら、起き上がる。

(あれで起きられるのか!?後頭部を鍬で強打されるはずなんだが)

「私らは、もう行くけど…。そうだあんたの名前は?」

「恭也…高町恭也です」

「恭也ね、私はソポク。こっちのがテオロ」

「俺の事は親父とでも呼んでくれや、よろしくな新入りさん。あの嬢ちゃんたちも含め後で紹介してくれや」

そう豪快に笑いながらソポクと共に畑の方へ歩いてゆく。

「…なんとも嵐のようだったな」

「あはは…」

エルルゥはさっきまでの会話を思い出し、軽く苦笑いをする。

「でも…新入りか…いきなりでそう呼んでくれるのは暖かいし、いいところだ」

「私たちは、助け合って生きていますから、森の恵みを受け、細々とですけど」

恭也の言葉に多少くすぐったそうにエルルゥは答える。

「まだ、案内していないところは多々ありますけど、あの方達も目を覚ますころでしょうし、そろそろ帰りましょうか?」

「そうだな…。でエルルゥ、あの影からのぞいている娘なんだが…」

「アルルゥですね、話したいみたいなんですけど。あの娘人見知りですから…」

エルルゥがすまなそうに言うがそれをさえぎるように、頭にそっと撫でる。

「…あ」

「エルルゥが気にする事じゃない。まぁゆっくりと話していけば良いだろう」

(それになんとなくだが、ここを離れるのはしばらく先になるだろうしな)

「はいっ」

エルルゥが嬉しそうに表情をほころばせる。そして後ろからついて来るアルルゥと共に家へ戻ることにする。

「ほっほっほ、戻ってきたようじゃな」

「お帰りなさい」

「お帰り、恭也君」

家を戻ると、トゥスクルに加え、目を覚ました那美と薫がお茶を飲んでいた。

「目を覚ましましたか…何処も怪我とかは無いですよね?」

「私も薫ちゃんも平気ですけど…ちょっと…」

那美の言葉で恭也は言いたいことを理解する。霊力が異常に消耗しているのだ、霊力技を撃つことが出来るか疑問に残るほどに。といっても、あくまで退魔ができるか怪しいといった具合だが。

「まぁ色々話すこともあるだろうが、まずはお座り。ほらアルルゥもこっちにおいで」

その言葉に反応するようにアルルゥが居間の柱の影に隠れる。トゥスクルが三人分のお茶を用意しようとするのをエルルゥが自分がやると制し、用意をしてゆく。

「さて、はじめてみる顔も居ることだしまずは自己紹介をしておくかね」

「エルルゥです」

「神咲薫です。ありがとう手当てをしてありがとう」

「神咲那美です。同じくお礼を言わせてくださいね」

薫と那美が微笑みかけると、エルルゥは恭也にいったときと同じようにあわてながら返答をしていた。

「あれ?カンザキって…」

「あぁうち等は家族だからね」

エルルゥは薫の言葉に納得してままだ隠れているアルルゥに声をかける。

「ほら、アルルゥもちゃんとご挨拶しなさい」

「ん…アルルゥ」

アルルゥがおずおずと顔をだし、挨拶をすると薫と那美もそれに笑みで返す。それをみたアルルゥはさらに遠くまで行ってしまう。

「すみません…人見知りが激しくて」

「いいじゃなですか、可愛いですし」

那美がアルルゥを見て、そんな言葉を零すとエルルゥは嬉しそうな表情する。そしてこの後夕飯まで頂き、トゥスクルの「話したいこともあるじゃろうて、いつまでこの村にいるかは分からんが、明日返事を聞かせておくれ。わしとしては孫も気に入ってるみたいだしこのまま残ってほしいのだがな」と笑いながら、三人まとめて寝かされていた部屋に戻された。三人まとめてといった時にエルルゥが些か不機嫌そうな顔をしていたが恭也にそんな理由がわかるわけがなかった。

「それで、恭也君ここはいったい何処だと思う?」

「少なくとも、海鳴…というか俺たちがいた世界ではないかと。文化レベルも違いますし、それに…」

「人ですね…耳や尻尾。それが当たり前のようになってる」

薫の言葉に、恭也は自分なりの答えと那美はここに着いての疑問点を挙げる。

「夜の一族でもない…ここではあの人たちが一般的なのだと思います。おれがあった村の人たちは、みんなそうでしたから」

村の中をみて思ったことを口にすると、薫と那美は考え込んでしまう。

「ここがどうなったというのも大事ですけど…これからどうしましょうか?」

「俺はここに残るのがベストだと思いますよ…判断すべき情報が少なすぎる。それにトゥスクルさんに聞いた限りでは、戦争…とゆうより、合戦や戦といったほうが正しそうですが…が各地で起こっている。そんな中をなんの情報も無くいくのは危険すぎる」

「そうだね…私も恭也君の意見に賛成だ」

「それじゃぁこれからのことは決まりですね」

那美が取り敢えずとは身を置く場所を決められたことに安堵する。

「それじゃ、二つの疑問だ…恭也君は退魔師なんだよね?」

薫の言葉に那美も表情を固くする。

「…そうですね、俺の場合は本当に退魔に特化した形ですが…」

恭也は軽く目を瞑り、一度教えているが再度名乗ることにする。

「永全不動 御神神刀流 当主 不破恭也です」

「え…不破って、それに不破…って?」

「姓は流派を名乗るときだけ変えています。家の一族の事はお話したとは思いますが…そこにもう一つだけ隠されたことがあったんです。それは神刀流…御神不破で霊力を持ち、裏の存在であった御神、不破に更に秘匿された流派…これにつては今はここまでにしてもらえませんか?色々事情がありますので」

那美の困惑にかまわず恭也が続けた内容に薫はうなずく。

「ありがとう…色々あるのにそこまで教えてもらえば十分だ…。一個は納得できた、重要なのはここに来たときのことだけど?」

「あれに関しては分かりません…地震の後、刀が光って意識を保てませんでしたから」

「恭也君もか…」

「あの〜…薫ちゃんと恭也さんは何か聞きませんでした?」

「…ええ」

「聞いたね」

恭也と薫も那美の疑問に答える。

「確か…
刻が来た…悲しき神の目覚め
裏切り、絶望の時を越え
さらなる目覚めを迎える
その悲しみを記憶の狭間に閉ざしたまま
共に行くことを願い、果たされなかったその思い
愛しき者を奪われし、その悲しみ
記憶と共に仮面の奥に封じ
神剣を携えしものよ、神を裂くものよ、その力を我に…
悲しき神の望みを叶える為に…その力を…
でしたか…」

「まったくおなじですね…」

那美は聞き間違い出なかったことを実感する。

「神裂くもの…神剣を携えしもの…こここはうちらの事だが…最後の神をが気になりところだ…なにか嫌な予感しかしない」

薫はどうしたものかと考え込む。

「それについては、神姫にも聞いてみますが…そういえば十六夜さんは起こせますか?」

「いや…もうすこし様子を見るつもりだが、霊力がかけている感じがする。おそらく一気に削られて休んでる状態だと思うが…恭也君、いま君は神姫に聞くといった?」

「えぇ…俺の小太刀は神剣…霊剣みたいなもので、一つの存在がそれぞれ宿っているので」

「……そのうち紹介してくれるのか?」

「えぇ、それはもちろん」

恭也の言葉に薫は納得する。那美は、さりげなく恭也に神姫を見せてほしいといって真紅の鞘から小太刀を引き抜き、その色と風格にため息をつく。それは傍で見ていた薫も

「はぁ…なんか吸い込まれそうな感じがします…きれいな緋色の刀身…」

しばらく見て、那美は小太刀を恭也に返す。

「これからは、暫くはここでお世話になるということと、十六夜さん達が目を覚ましたら事情を聞いてみる。それでその時に次の行動を決めましょう」

恭也の言葉に二人は納得する。

「今日はもう休もうか、トゥスクルさんも答えは明日でいいといってくれてるし」

薫の言葉に那美はちょっと安堵したようにうなずく。どうやらかなり眠気と戦っていたみたいである。

「「「それではお休みなさい」」」

そういい三人はゆるゆると眠りについてゆく…




あとがき
うーん、日常篇てか、現状の確認だけでおわったな
「ラスティ」まぁそれはいいとして薫のしゃべり方はなんなのよ?
ごめんなさい…無理でした…
「ラスティ」また、能力不足が露呈したわね
ぐ…それを言われるとどうしようもないんだが
「ラスティ」分かってるなら良いけど…どうやら話が軌道にのったみたいだけど
あぁ、あとはハクオロを出すタイミングかな。もう少し日常を書いてから行きたい気もするけど
「ラスティ」やっぱりだすのね
出すさ
「ラスティ」まぁ止めはしないけど…頑張って
と、今回はここまでで。読んでくださりありがとうございます。次は遅筆ですのでいつになるかは謎ですが、次であえるのなら、またよろしくお願いします。




ようやく目覚めた薫たちと今後を話し合った恭也たち。
美姫 「まあ、帰る手段が今のところはないみたいだしね」
これからどうなる、どうする!?
美姫 「恭也の神剣に宿っている者はどんな人物なのかも楽しみね」
うんうん。次回も楽しみにしてます。
美姫 「それじゃあ、また次回でね〜」



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