永久の眠り

 

プロローグ

 

◇八束神社◇

 

「今日はここまで」

 

美由希に小太刀を突きつけ、恭也は鍛錬を終了させる。

 

「はぁ〜、ありがとうございました。にしても、膝が治ってからの恭ちゃんの背中は遠いなぁ…」

 

そういい美由希は小太刀をしまう。

 

「そんなことはないさ。美沙斗さんに色々教わってるおかげもあるのだろうが、近いうちに俺は追い抜かれるだろうな」

 

そう言いながら、恭也も小太刀を収める。燃えるような真っ赤な鞘に。

 

「ねぇ…恭也ちゃん?その小太刀は初めてみたけど」

 

「あぁ…これ…っ!?」

 

小太刀について語るわけにもいかず、どうごまかそうと考えたときに、神社の奥から嫌な風が吹いてくる。そう…生温い…体温のようなものを感じそうな

 

「美由希…先に帰れ。俺はやることをやってから戻る」

 

「なんで?それなら私もいるけど…」

 

「いいから戻れ」

 

「…わかった」

 

恭也の真剣な表情と声を聞いて、納得はしたくないが取り合えず先に戻ってゆく。

 

(行ったな…美由希に付き合わせるわけにもいかんし…それにさっきの気配…大きいな)

 

恭也は先ほど美由希との鍛錬では見せなかった、黒い鞘を持つ小太刀と赤い鞘を持つ小太刀を携え、森の中の気配を追ってゆく。

 

 そしてすぐにそれは見つけることが出来たが…嫌な気配を持った悪霊…もはや妖魔といったほうがいいかもしれないが、それと戦っている知り合い二人が問題だった。

 

(薫さんに…那美さん…どうしたものか、加勢してもいいのだが…様子を見ながらだな…二人が祓えるならそれに越したことはない)

 

取り敢えずは、二人から死角になる位置で静観を決め込むことにした。

 

 

「那美っ離れて!! 十六夜っ」

 

那美に対して、悪霊から距離をとるように言い、構えを取る。

 

「そんなこといったってー」

 

軽く泣きそうになりながら逃げてはいるものの、完全には逃げ切れていない。しかし、薫は那美が巻き込まれない位置まで相手を離したのをみて

 

「真威 楓陣刃!!」

 

十六夜に炎を宿し、その炎を叩き付ける。那美も薫がやってくれたと思い逃げていた足を止めるが、その瞬間、炎の中から先ほどの悪霊が飛び出してくる。完全に不意打ちの形になってしまい、ただでさえ体術を見につけていない那美は避けようが無かった。

 

「那美っ!?」

 

もはや霊体ではなく、質量すらもつ悪霊の爪が突き刺さると思ったとき背後から声が響く。

 

「神魔封滅」

 

「え?」

 

薫は後ろから響いた聞き覚えがある声と、その姿を見て絶句する。とびだしてきたのは自分が知る限り退魔師としての霊力などもっていないはずの恭也だったからだ。しかし、身に帯びる力は神咲の当代である自分すらも上回っている…

 

――御神神刀流 奥義ノ参 殺花――

 

恭也は弾丸の如く那美に迫る悪霊に迫り、刀身に霊気を纏わせた緋色の小太刀を突きこみ内側から霊気を爆裂させる。

 

「おおぉぉぉ…」  

 

そしてその場に残るのは緋色の小太刀を携える恭也と、それを呆然と眺める那美と薫だけとなり、恭也は小太刀を収めて那美に声をかける。

 

「那美さん大丈夫ですか?」

 

「あ…はい…ありがとうございます恭也さん…」

 

那美は要領が掴めないままとりあえず礼を述べるが、薫が固い表情をしながら近寄ってくる。

 

「…恭也君、君は退魔師じゃったのか? それにいままで君の霊力は一般人以下だとおもっていたんだが」

 

「騙そうとしてたわけではないんですが…ちょっと事情がありまして…」

 

「うちら意外に退魔師がおらんちゅうわけではないが…流派を聞いても?」

 

恭也は苦笑いしながら、取り敢えず答えることにする。

 

「永全不動八門一派 御神神刀流 です。簡単に言うと薫さんの一灯流と考えてもらって結構です」

 

「一灯流と同じって…恭也さん退魔師だったんですか!?」

 

那美は今更驚いている

 

「那美…いったい何をきいとったの」

 

薫は那美の言葉に呆れきっている。

 

「だって…でも驚くじゃないですか〜」

 

涙目になりながら二人を見る。

 

「でも恭也君…出来れば詳しく話を聞かせてくれないかな? それにその小太刀も霊剣みたいだが…」

 

「霊剣…とはちょっと違うんですが…神刀流では神剣と言われているみたいですね」

 

そういい、赤と黒の小太刀をかざす。

 

「銘を神姫と黒牙といいます」

 

そういい恭也が説明をしようと神姫と黒牙を抜くと…異常が起こる。

 

強い地震…たっているのもやっとなくらい強い地震。三人はそこで始めて異常を察する。

神姫と黒牙が光を放ち恭也を包み、十六夜も同じように薫を包み込む。もう二人の意識はこの時点では薄れ、何かを知覚することすら出来なかったが、頭の中に響く声だけは聞き取ることが出来ていた。

 

「恭也さん、薫ちゃん!?」

 

那美は二人を包み込む光が強くなってきたのを見て、何がどうなっているのかは分からなかったが…このままでは二人が消えてしまう、光の中に手を伸ばし、二人の手を伸ばす。掴んだと思った瞬間…那美は光包まれ、意識を失う。

 

そして三人の中には、同じ言葉が響き渡っていた

 

刻が来た…悲しき神の目覚め

 

裏切り、絶望の時を越え

 

さらなる目覚めを迎える

 

その悲しみを記憶の狭間に閉ざしたまま

 

共に行くことを願い、果たされなかったその思い

 

愛しき者を奪われし、その悲しみ

 

記憶と共に仮面の奥に封じ

 

神剣を携えしものよ、神を裂くものよ、その力を我に…

 

悲しき神の望みを叶える為に…その力を…

 

 

 

 

そして恭也は意識を取り戻す…さっきまでは寝ていなかったはずなのに、寝かされている自分…、少しばかりあたりを見回してみると、同じように寝かされている薫と那美の姿がある。

(これは一体?)

 

見慣れぬ場所、なぜ自分が寝ているのか。それ以前に先ほどの光はなんだったのか?など考えても理解できない部分が多い…それに今自分を看病してくれているらしいこの人は誰だ?

 

「お目覚めになりましたか?」

 

黒髪を伸ばし…どこかの民族衣装のようなものをきている少女。それは動物のような耳と尻尾を持っていることが一番、特徴的だった

 

 

 

 

 


あとがき

どうも御月です。取り敢えず新しいクロスSSです。リリカルとのクロス終わってないのに新しいシリーズやろうとして血迷ってますが(滝汗)

 今回はオリジナル設定もかなり含まれてきます…恭也が退魔師と化してますし…。なんか茨の道なんじゃとも思いますががんばらせていただきます。

「ラスティ」新しいのはじめてどーすんのよ?

いや…ね、色々あるのだよ

「ラスティ」まぁいいけど、さっさと続きは書くこと

 あはは…

「ラスティ」ここまで読んでいただいてありがとうございましたー。それではまた次回読んでいただけるなら、お会いしましょう




新連載〜。
美姫 「多分、あれとのクロスだとは思うけれど」
まだ、はっきりとは秘密みたいだな。
美姫 「これからどんな物語が始まるのかしらね〜」
楽しみにしてますね。
美姫 「それじゃ〜ね〜」
ではでは。



頂きものの部屋へ戻る

SSのトップへ